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社内文書をAIに探させる3つの方法を比べてみた:新AI「Jev」の検証

社内文書をAIに探させる3つの方法を比べてみた:新AI「Jev」の検証
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えだまめ
2026-10-16

BTMAIZ のえだまめです。

社内の規程や手順書をAIに探させ、質問に答えさせる仕組みは、社内版の「AI検索」として広がっています。この「探し方」には、いくつかの流派があります。今回は、新しいAI「Jev」を使った探し方を含めて3つの方法を、同じ30問の質問で比べてみました。

要点

AIに社内文書を探させる3つの方法を比べたところ、30問の検証では、正解を見つける力に明確な差は出ませんでした。違いが出たのは、間違え方と、導入前に気をつける点です。

  • 探し当てる力は、どの方法も同程度:今回の30問では、明確な差は確認できませんでした。
  • 間違え方が違う:「本は合っているのに、ページを間違える」方法と、「最初の棚を間違えて、本ごと外れる」方法がありました。
  • 棚の分け方が成否を左右した:棚から順に絞る方法では、文書の分類が曖昧(話題が複数の棚にまたがる)だと、間違えやすくなりました。
  • 費用はごくわずか:新しいAI「Jev」の利用料は、検証全体で約0.33ドル(50円前後)でした。

これは公開文書46件・質問30問の小規模な検証です。結論は「この規模・この条件では」と読んでください。

何を比べたのか

社内の規程や手順書をAIに探させ、質問に答えさせる仕組みは、社内版の「AI検索」として広がっています。この「探し方」には、いくつかの流派があります。今回は、図書館にたとえて3つを比べました。

社内文書をAIで探して答える仕組みと、Jevが入る場所

社内文書をAIで探して答える仕組みと、Jevが入る場所質問から検索、回答までの流れの図。今回の検証は検索の部分だけで、意味の近さで探す方法は手元のPC、棚から順に絞る方法と全部の目次から選ぶ方法は外部サービスJevを使う。社内文書を AI で探して答える仕組みと、Jev が入る場所今回の検証は「検索」の部分だけです。見つけた章・節から回答を書く AI は、対象外です。質問(社員が入力)検索(今回の検証で比べた部分)A 意味の近さで探す(ベクトル検索)手元の PC で処理(API料金なし)章・節を数値化(事前に 1 回)質問も数値化数値が近い順に章・節を選ぶB 棚から順に絞る(階層探索)外部サービス Jev を使用① 棚を選ぶJev が判断② 本を選ぶJev が判断③ 章を選ぶJev が判断C 全部の目次から選ぶ(全件選択)外部サービス Jev を使用全 447 の章・節の見出しを並べるJev が選ぶ(約 3 回に分けて絞る)※ キーワード検索(BM25)とその併用方式も、付録で比べています。見つかった章・節回答を作る AI(今回の検証の対象外)回答凡例Jev が入る場所手元の PC で処理今回の対象外Jev は文章を書かず、選ぶだけです。データの流れに注意Jev は外部サービス。検索のたびに、質問文と選択肢の説明文が送られます。(今回は公開文書のみ使用)社内文書では、送る範囲と契約条件の確認が必要です。
探し方図書館でたとえると特徴
意味の近さで探す(ベクトル検索)司書が、質問と意味の近いページを、全ページの特徴から一瞬で探してくる速く、今回のローカル構成ではAPI料金なし(実運用では別の費用が必要)。ただし、似た話題のページに引き寄せられやすい
棚から順に絞る(階層探索)「棚 → 本 → 章」と、順に選んで絞り込むAIの判断回数が少なく、安い。ただし、最初の棚を間違えると戻れない
全部の目次から選ぶ(全件選択)すべての章・節を候補にして、何回かに分けて絞り込みながら、「どれか」と選ばせる本の取り違えが少ない。ただし、AIに渡す情報量が多く、費用は階層探索の約14倍

ほかに、キーワードの一致で探す方法と、意味検索との併用も比べました(詳細は付録)。

「選ぶ」役のAI「Jev」

「選ぶ」役には、Jevという新しいAIを使いました。Jevは文章を書かず、「選択肢のうちどれか」だけを、確信度つきで答えます。TypeSafe AI社が2026年9月15日に早期アクセスを開始しました。

TypeSafeの公式ドキュメントでは、料金は100万入力トークン(文章量の単位)あたり0.042ドルとされています(公式ドキュメント)。速度については、DigitalOceanの記事で、TypeSafeの公表値として0.07〜0.5秒(70〜500ミリ秒)と紹介されています。これらは提供元の公表値です。この記事の速度と費用は、今回の実測値を使います。

なお、今回の「意味の近さで探す」方法は、専用のデータベースを使わない簡易な構成です。447の章・節の規模なら、それで足りました。この記事が比べているのは「専用データベースが必要か」ではなく、「探し方の違い」です。

どんな条件で試したのか

図書館にたとえると、「公開された技術書46冊を用意し、30問の質問を出して、正解のページを探させた」実験です。

  • 文書:Microsoftの公開技術文書46件(447の章・節)を使いました。社内文書は使っていません。ライセンスはCC BY 4.0(© Microsoft)です。
  • 質問:30問を、英語と日本語の両方で用意しました。答えが1か所にあるもの10問、文書と言い回しが違うもの13問、複数の文書にまたがるもの7問です。
  • 採点:「正解の章・節にたどり着けたか」で採点しました。
  • 紛らわしさ:似た話題が別の文書にある組み合わせを、意図的に入れました。たとえば、「過去の状態に戻す機能(タイムトラベル)」が2製品に、「アクセス制御」が3種類にあります。
  • Jevの使い方:OpenRouter(複数のAIを1つの窓口で使えるサービス)経由で呼びました。Jevに見せる各章の説明は、本文の冒頭2文の抜き出しです。

比べ方の前提:AIに見せる情報量が違います

「意味の近さで探す」方法は、各章・節の本文(長いものは途中まで)を数値化して判断しました。一方、Jevが見ているのは、見出しと本文の冒頭2文だけです。

つまり、意味検索のほうが、多くの情報を見て判断しています。

結果:大きな差は出なかった

正解にたどり着いた割合は、方法によって数ポイント違いました。ただし、今回の30問では、統計的に確かな差とは確認できませんでした。

探し方英語の質問日本語の質問
意味の近さで探す60.0%53.3%
棚から順に絞る63.3%66.7%
全部の目次から選ぶ73.3%73.3%

数字は、AIが「これが正解」と最初に挙げた章・節が合っていた割合です。件数で書くと、英語の質問30問のうち、意味の近さで探す方法は18問、棚から順に絞る方法は19問、全部の目次から選ぶ方法は22問が正解でした(日本語の質問では16問、20問、22問)。

「全部の目次から選ぶ」が最も高く見えますが、30問では1問で3.3ポイント動きます。統計の検定でも、どの組み合わせも「偶然とは考えにくい」水準(p<0.05)には届きませんでした(最小はp=0.07)。「差がない」ではなく、「差を確認できなかった」と読んでください。

速度と費用(1問あたり。円換算は1ドル=160円):

  • 意味の近さで探す:約0.13秒。この検証では手元のPCで動かしたため、API料金はかかりませんでした。実運用では、サーバーなどの費用が別にかかります。
  • 棚から順に絞る:約0.8秒、約0.0001ドル(0.02円ほど)。
  • 全部の目次から選ぶ:約0.9秒、約0.0015ドル(0.2円ほど)。

具体例:実際の質問と結果

数字だけでは伝わりにくいので、実際の質問と、各方法が何を選んだかを4つ紹介します。なお、4つは「違いが分かりやすい問」を選んだもので、30問からの無作為な抽出ではありません。質問は日本語と英語の両方で試しましたが、文書は英語なので、章・節の名前は英語のままです。以下の確信度は、英語の質問で、最後に実行したときの値です(Jevは同じ質問でも、確信度が少し揺れます)。

棚から順に絞るしくみ(イメージ)

階層探索のしくみ:Jevが棚、本、章を順に選ぶ質問に対して、Jevが棚、本、章・節の3段階で選ぶ流れの図。最初の棚で外すと、本も章もずれる落とし穴を示す。階層探索のしくみ:Jev が「棚 → 本 → 章」を順に選ぶ質問の例(イメージ):「Warehouse で、行ごとにアクセス権を分けるには?」① 棚を選ぶ(実際は大・小の 2 段)Jevfabric正解azure-aigovernance外れた例② 本を選ぶ(data-warehouse の中)Jevtime travel行レベルセキュリティ正解動的データマスキング③ 章・節を選ぶ(選んだ本の見出し)Jev概要(導入部)答えが書かれた節正解ほかの節 …概要の節を選んで外れる例もありました。落とし穴:最初の棚で外すと戻れない権限についての質問 3 問が、「ガバナンス、セキュリティ、アクセス制御」という名前の棚に引き寄せられ、本ごと外れました(確率は最大 0.95)。候補を 3 つ残す設定でも、戻れない問がありました。棚の名前や分け方が、成否を左右します。Jev の役割と、1 問あたりの費用各ステップで、選択肢のうち「どれか 1 つ」を確率つきで答えます。文章は書きません。1 問あたり約 4 回呼び出し、入力は約 2,500 トークン、費用は約 0.0001 ドルでした(英語の質問)。※ 実際の検証は、棚が大・小の 2 段で、計 4 段階です。

例1:どの方法も当てた質問(q01)

例1:全部正解

質問:Fabricのデータウェアハウスで、タイムトラベル(過去の状態を問い合わせる機能)のデータ保持期間の既定値は?

正解:「Query data as it existed in the past」の中の「Data retention in Fabric Data Warehouse」

意味の近さで探す正解
棚から順に絞る正解 棚100% → 本99% → 章100%で、迷いなく到達
全部の目次から選ぶ正解

例2:意味検索が外し、棚から順に絞る方法が当てた質問(q16)

例2:意味検索が外れた例

質問:夜間の大きな取り込みジョブは、同時にSQLエンドポイントで走っているレポートのクエリを遅くする?

正解:「Workload management」の中の「Compute pool isolation」

意味の近さで探す外れ 1位は「Result set caching(結果のキャッシュ)」の紹介ページ。正解は2位でした
棚から順に絞る正解 棚100% → 本98% → 文書100% → 章93%と進んで到達
全部の目次から選ぶ正解

意味検索は、「夜間」「レポートのクエリ」といった言葉に近い、キャッシュの話に引き寄せられたようです。

例3:棚から順に絞る方法が、最初の棚で外した質問(q12・q13)

例3:最初の棚で外れた例(q12)

質問:動的データマスキング(列の値を隠す機能)で保護された列の、マスク前の値を見るには、どの権限が必要?

正解:「Dynamic data masking in Fabric Data Warehouse」の中の「Permissions for dynamic data masking」

意味の近さで探す正解
棚から順に絞る外れ 最初の棚で「Governance, security and access control(ガバナンス、セキュリティ、アクセス制御)」を90%で選択。正解の棚(Microsoft Fabric)は10%。その後「Azure custom roles」にたどり着きました。候補を3つ残しても戻れませんでした
全部の目次から選ぶ正解

「権限」という言葉に、「アクセス制御」の棚が強く反応しました。もう1問のq13(営業担当者に、自分の担当地域の行だけを見せる方法)でも、確信度95%で同じ棚に進んで外れました。確信度が高くても、棚の分け方が合っていないと外れることがある、という例です。

例4:選択肢の並び順で、結果が変わった質問(q24)

質問:インデックスに問い合わせるだけで、何も変更しないチャットボットアプリには、どのロールを付与すべき?

正解:「Connect to Azure AI Search using roles」の、読み取り専用のロールを説明した節

この質問では、最初の棚の選択で、「Governance, security and access control」と「Azure AI services」の確信度が、ほぼ半々でした(55%対45%)。選択肢の見せる順番だけを変えて5回試した結果です。

回見せた順番(棚)確信度選ばれた棚最終結果
1ガバナンス → AI → FabricAI 63%、ガバナンス 36%AI正解
2Fabric → ガバナンス → AIガバナンス 57%、AI 42%ガバナンス外れ
3AI → Fabric → ガバナンスガバナンス 57%、AI 43%ガバナンス外れ
4AI → ガバナンス → FabricAI 57%、ガバナンス 43%AI正解
5ガバナンス → AI → FabricAI 64%、ガバナンス 35%AI正解

同じ順番(1回目と5回目)で見せると、同じ棚を選びました。順番を変えたときだけ答えが変わっているので、ランダムなばらつきではなく、並び順の影響と考えられます。確信度が50〜60%台の、迷っている場面でだけ起きました。

複数の本にまたがる質問は、どの方法も苦手でした

答えが複数の場所に分かれている7問は、全部を見つけて初めて正解になります。英語では、「1つだけ返す方法」(意味の近さで探す、棚から順に絞る、全部の目次から選ぶ)は0問でした。「上位3件を返す方法」では、棚から順に絞る方法(候補3つ)が3問、意味検索が2問でした。1つだけ返す方法は、原理的に全部を見つけられないため、この種の質問には向きません。

質問の種類(英語)意味の近さで探す棚から順に絞る全部の目次から選ぶ
答えが1か所(10問)8問9問10問
言い回しが文書と違う(13問)10問10問12問
複数の場所(7問)0問0問0問
合計(30問)18問19問22問

(各方法が1位に挙げた1件で採点。複数の場所の質問は、1件では正解にできません。)

わかったこと

正解率が同程度でも、中身を見ると、方法ごとに違いがありました。

① 間違え方が違う

  • 意味の近さで探す:「本は合っているのに、ページを間違える」ことが多くありました(正しい本までは90%)。文書全体の概要のページに、質問が引き寄せられがちでした。
  • 棚から順に絞る:最初の棚を間違えると、本ごと違うものになります。
  • 全部の目次から選ぶ:本の取り違えは起きませんでした(100%)。

② 棚の分け方が、成否を左右した

棚から順に絞る方法が間違えた主な原因は、棚の分け方でした。権限やアクセス制御についての質問3問が、「ガバナンス、セキュリティ、アクセス制御」という名前の棚に引き寄せられたのです。

ところが、正解は、その棚ではなく、各製品の説明書の中にありました。会社にたとえると、「経費精算の規程」が経理部と総務部のどちらの棚にもありそうで、どちらを探すか迷う状況です。

棚の名前から「セキュリティとアクセス制御」の言葉を外して、やり直しました(結果を見てから直した、事後の実験です)。AIの確信度は、91%から73%へなど下がりましたが、選ぶ棚は変わりませんでした。探す候補を3つに広げると、一部は正解に戻りました(ただし、この差も統計的には確認できませんでした)。

名前の問題ではなく、話題が複数の棚にまたがる、分類そのものの曖昧さが原因のようです。AIを入れる前の、文書の分類の設計が、結果を左右する可能性があります(この結果からの見立てです)。

③ 選択肢の並び順で、答えが変わることがある

AIに見せる選択肢の順番を入れ替えただけで、答えが変わることがありました。並び順を変えて5回試したところ、30問中7問で結果が変わり、正解と不正解が入れ替わったのは2問でした。変わったのは、AIの確信度が低い場面だけでした。

「棚から順に絞る」(候補1つ)と「全部の目次から選ぶ」は、同じ条件で2回実行すると、30問すべて同じ結果でした。

AIの判断を自動処理に使うなら、確信度が低いものは人が確認する仕組みが要りそうです(見立てです)。

導入を考えるときの目安

今回の結果からの見立てです。規模を変えた検証はしていないため、目安として読んでください。

  1. まず、文書の分類を決める:棚の分け方が曖昧だと、棚から順に絞る方法は間違えやすくなりました。探し方を選ぶ前に、「どの文書を、どの切り口で整理するか」を決めておく価値があります。
  2. 文書が数百の章・節程度なら、「全部の目次から選ぶ」が安定していました:費用は1問あたり1円未満です。
  3. 文書が多く、費用や速度を抑えたいなら、「棚から順に絞る」:AIに渡す情報量が少なく済みます。ただし、分類が質問の切り口と合っていることが前提です。
  4. 自動化するなら、人の確認を残す:確信度が低いものは人が確認する、または別の方法と併用する、といった設計が考えられます(併用は未検証の案です)。
  5. 小さく試す:自社の文書で、正解付きの質問を30問ほど作って比べるだけで、傾向がつかめます。今回のJevの利用料は、全部で1ドル未満でした(準備や作業の人手、ほかのAIの利用は別です)。

なお、今回は専用のデータベースを使わなくても足りましたが、数万の章・節の規模については、この検証からは言えません。

導入前に確認したいこと

社内文書に使う前に、次の4点を確認してください。

  • 情報の外部送信:今回はOpenRouterを経由して、TypeSafeのJevを利用しています。そのため、検索のたびに、質問文や選択肢の説明文が外部サービスへ送信されます。今回は公開文書だけを使いました。社内文書で利用する場合は、利用する経路を含め、各サービスのデータ取扱条件や契約条件を事前に確認する必要があります。
  • 新しいサービスであること:Jevは2026年9月に早期アクセスが始まったばかりです。名称、料金、仕様が変わる可能性があります。
  • 日本語の精度:提供元の資料には、日本語など英語以外では精度が下がると書かれています。今回の30問では、日本語でも英語と同等以上でした。ただし、文書が英語だった点に注意してください。日本語の社内文書で同じになるとは限りません。
  • 測定条件:速度は、今回の環境(外部の窓口経由、通常のPC)での値です。環境によって変わります。

この検証の限界

この結果は、次の条件の範囲でだけ読めます。

  • 規模が小さい:30問・46文書です。差の多くは統計的に確認できませんでした。英語と日本語は同じ質問の翻訳で、別々の60問としては数えられません。
  • 作り手の偏り:質問・正解・棚の分け方は、同じ作り手(AIアシスタントのClaude)が作りました。偏りが入っている可能性があります。
  • 事後の修正と実験:正解1件は、意味検索の結果を見た後、Jevを実行する前に修正しました。棚の名前を変えた実験は、結果を見てから行ったもので、同じ質問で測っています。改善の検証としては扱えません。
  • 比べた相手が限られる:意味検索は基本の構成だけです。結果を並べ替える仕組み(リランカー)や、日本語向けの工夫は試していません。
  • 未検証の条件:似た選択肢が多く並ぶ場合や、Jevに見せる説明をAIが要約した場合は、試していません。
  • 規模と経路:数千文書以上の規模と、提供元(TypeSafe)に直接つないだ計測も、未検証です。

まとめ

AIに社内文書を探させる3つの方法は、30問では正解率に明確な差が出ませんでした。分かれたのは、間違え方と、費用、そして文書の分類への依存度です。

探し方を選ぶ前に、次の2つを用意すると、判断しやすくなります。

  1. 自社の文書で作った、正解つきの質問セット(30問ほど)
  2. 質問の切り口と合った、文書の分類(棚の分け方)

検証の詳細と数字の根拠は、次の付録に載せました。

付録:技術者向けの詳細

ここからは、数字の根拠を確認したい方向けです。

方式の詳細

  • ベクトル検索:bge-m3で埋め込み、numpyで類似度を計算(ベクトルDBサーバは使わない)。埋め込む入力は「文書タイトル/見出し+セクション本文の全文」で、上限1,024トークンで切り捨て(447セクション中7件が対象。q23・q24の正解セクションを含む)
  • BM25:単語の一致による検索
  • ハイブリッド:ベクトル検索とBM25をRRFで統合
  • 階層探索:JevのChoiceで、フォルダ → サブフォルダ → 文書 → セクションの順に選ぶ。候補を1つ残すbeam=1と、3つ残すbeam=3
  • 全件選択:階層を使わず、447セクションすべてから、トーナメント方式で選ぶ
  • Jevは OpenRouter経由(モデルjev-1.13)。Jevに見せる説明は、本文の冒頭2文の抜き出し

到達率(30問)

方式英語 top1英語 top3日本語 top1日本語 top3応答時間 p50(英語)
ベクトル検索60.0%76.7%53.3%73.3%0.13秒
BM2553.3%70.0%––0.001秒
ハイブリッド60.0%73.3%––0.13秒
階層探索 beam=163.3%–66.7%–0.83秒
階層探索 beam=3–80.0%–80.0%1.84秒
全件選択73.3%–73.3%–0.88秒

「top1」は、AIが1位に挙げた候補が正解だった割合です。「top3」は、上位3つのどれかが正解だった割合です。階層探索の「beam=3」は候補を3つ残して進むので、top3で比べています。答えが複数の場所に分かれている7問は、全部見つけて初めて正解になるため、1位の1件だけでは正解にできません。

キーワード検索(BM25)とその併用方式は、日本語の質問では比べていません。文書が英語で、日本語の質問とは単語が一致せず、ほとんど見つからないためです。

検定(対応のあるMcNemarの正確検定)

  • 階層探索とベクトル検索(top1):英語 p=1.0、日本語 p=0.29
  • 階層探索 beam=3 とベクトル検索(top3、英語):p=1.0
  • 全件選択とベクトル検索(top1):日本語 p=0.07、英語 p=0.22

30問のため、差を見つける力は低い検定です。英語と日本語は同じ質問の翻訳で、独立した60問ではありません。

入力量と費用(英語、1問あたり)

  • 階層探索 beam=1:入力約2,500トークン、約0.0001ドル
  • 階層探索 beam=3:入力約6,300トークン
  • 全件選択:入力約34,700トークン、約0.0015ドル

棚の名前を変えた実験(事後)

  • governanceのフォルダ名を、「配下の製品名だけを書く」規則に変えて再実行しました。
  • 権限の質問でgovernanceを選ぶ確率は下がりました(動的データマスキング 0.91 → 0.73、行レベルセキュリティ 0.95 → 0.84)。
  • beam=1では3問ともgovernanceを選び、到達率は変わりませんでした(英語 19/30 → 19/30)。
  • beam=3では、2問が正解に戻りました(英語・日本語とも 24 → 26、p=0.5〜0.63)。

順序感度

階層探索(beam=1)を、選択肢の提示順だけ変えて5回実行しました。

  • 最終結果が全部一致したのは、30問中23問(76.7%)です。正誤が入れ替わったのは2問でした。
  • 選択が変わった段階は、117段階中9です。5回のうち最も低いtop確率が、どれも0.57以下でした。
  • top確率が0.8をまたいだ段階は13、0.5をまたいだ段階は3です。
  • 同じ選択肢の確率の変動幅は、中央値0.01、最大0.44です(同じ順序で再実行したbeam=1での最大は0.09)。
  • 同じ順序で再実行すると、beam=1では選択が変わった段階は0でした。並び順の効果は、実行ごとのばらつきとは別と考えられます。

Jevの再現性(同条件で2回)

  • 同じリクエストでも確率が変わります。同じ段階での最大差は、中央値0〜0.02、最大0.07〜0.26でした。
  • beam=1と全件選択は、2回とも30問すべて同じ結果でした。
  • beam=3は、出力が完全に一致したのが英語24/30、日本語22/30です。到達率は、英語76.7%と80.0%、日本語83.3%と80.0%でした。

選択肢の数(英語)

  • 正解1件とランダムな他セクションを一括で渡す条件で、5〜200件の到達率は95.7〜100%でした。
  • 10件ずつのトーナメントは、精度が上がらず遅くなりました(200件で23回呼び出し、p50 5.2秒。一括は0.36秒)。
  • 妨害候補はランダムです。紛らわしい候補が並ぶ条件は未検証です。

費用の内訳

  • 1回目の一式(全問評価・選択肢数・順序感度):Jevの呼び出し2,656回、入力465万トークン、0.1955ドル
  • 追加実験(全問の再実行・フォルダ名の比較):約0.13ドル
  • 合計:約0.33ドル

参考リンク

検証データ:Microsoft Learnのソース(fabric-docs、azure-docs)、CC BY 4.0、© Microsoft。セクション分割などの変更を加えています。

投稿日2026年10月16日

カテゴリーTech Blog

タグ RAG

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